tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

今年から変わったGDPの計算基準

2017年12月30日 23時51分05秒 | 経済
今年から変わったGDPの計算基準
 先月11月7日に「政権の成長率論争の不毛」を書きました。
 民主党時代より安倍政権になってからの方が経済成長率が高いかどうかといった問題でした。

 あの時の視点は、経済成長は、多様な要因が絡まった結果で、車の様にアクセルを踏んだからすぐスピードが出るといったものではありませんといった意味で、そんな論争は不毛ですよと書いたのですが、その時、最近の経済成長は、GDPの計算方式が変わったことの影響を受けているという解説がありました。

 実は今年からSNA(system of national account)は変わっています。遡って改訂した数字も出ているようです。このブログで見て来ました四半期ごとのGDP速報も、2009年に国連で採択された2008SNAに準拠するように変更されています。

 その結果、GDPは少し大きくなりました。ご存知の方、お気づきの方も多いと思いますが、年末でもありますので、今年採用の方式の要点だけでも記しておきたいと思います。

 この方式が国連で新しい国民経済計算の基準としてふさわしいとされた理由は、研究開発の重要性(投資としての重要性)をGDPに反映できるようにしたいという事だと思われます。
 日本では「米百俵」の逸話にもありますように、人間に対する投資(教育)の重要性は言われていますが、GDP計算ではそこまで行くのは困難で、さしあたって企業の研究開発投資を設備投資と同じように、資本支出として、GDPの構成要素にしたいという事が中心のようです。

 では具体的のどうなるかといいますと下のようです。
旧計算:国全体の産出100で、内訳が、中間消費50、資本支出20、消費支出30
新計算:国全体の支出100で、内訳は、中間消費40、資本支出30、消費支出30

 という形になり、これまで中間消費として材料部品などの経費と同じに扱われていたR&D(研究開発)に支払った経費10が、機械設備などと同じように資本支出に勘定されて、中間消費が10減り、資本支出が10増えて、GDPは50だったのが60になるという事です。

 現実の経済活動そのものは何も変わらないで、研究開発の10がGDPに入るだけですから、GDPが大きくなったからと言って、経済成長が高まったわけではありません。研究開発の効果で将来成長率が高まるという事(期待)でしょう。

 国民経済計算は三面等価ですから、上の数字は支出面で、生産面では、(カッコ内旧計算)中間投入40(50)、付加価値60(60)、分配面では、営業余剰30(20)、雇用者報酬等30(30)でGDPは支出面、生産面、分配面共に60となります。

 このほか防衛装備品の扱いも資本とされますが、これは、政府の消費支出が、政府の資本支出になるだけで、GDPは変わりません。

 GDPの概念も少しづつ変わるのかもしれませんが、人間が豊かで快適な生活をする原資がGDPと思っていましたら、豊かになる可能性もGDPに入ることになったようです。
 また、労働問題、労使関係で言いますと労働分配率は、下がることになりそうですので、その辺りで誤解のないようにすることも大事でしょう。
 年が明ければ春闘ですが、労使間でどんな話になるのでしょうか。

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